2012年5月14日月曜日

統合アプローチ/分断アプローチ

スティーブ・ジョブズの正式評伝を、遅ればせながらよみおえた。様々な形で目に触れた事のあるストーリーで、目新しさと言えば、闘病風景ぐらいかも知れないが、その波乱万丈の人生やメチャクチャな性格に、改めて、二度と現れないカリスマの喪失を感じた。

マイクロソフトやグーグルとの闘いの中で、彼らは分断アプローチを取っているが、自分たちは統合アプローチの正しさを信じている、というフレーズがよく出てくる。

分断アプローチは、いわゆるオープン戦略でライセンス戦略とも言える。つまり、ライセンス契約さえ結べば誰でも使えるようにするという方針で、プレイヤーを増やし多様性を生み出す事ができるが、それぞれがある決まり事の中で動かなければいけないので、全体としての洗練度は落ちるし、バグも増える。

統合アプローチは逆で、自分たちで閉じた世界を作るクローズド戦略だ。一つの会社が全ての面倒を見るわけだから、当然、多様性は損なわれるし、先端技術の取込には偏りがある。一方でソフトウェアとハードウェアの一体感は揺るぎないものになり、それぞれの能力の限界まで活用できるため、一つひとつの機能が深化する。

分断アプローチのカギはオープン性をいかに担保するかで、そのなかでいかに収益に繋げていくかだろう。最後には結局、資本主義的価格競争になるのは目に見えているいるので、マイクロソフトやグーグルのように、価格競争から一歩引いたポジションを確保できない限り、旨味はない。

統合アプローチは、閉じた世界の妥当性がカギだ。誰かが作った箱庭を素晴らしいと思えるかどうかは、製作者のセンスやデザインや拘りにかかっている。多くの人に共感してもらえる箱庭を作れるかどうかが、市場規模も価格も全てを決める。

スティーブ・ジョブズは、そこに「テクノロジーとリベラルアーツの交差点」という立ち位置とともに、「シンプル」という方向性を設定した。そして、そこに拘り抜くことができたから、統合アプローチでも成功できたんだろうと思う。ここに多少でも揺らぎが発生すると、分断アプローチの多様性の罠に引っかかって、徐々に衰退に向かうと思われる。今後のアップルは、拘り抜ける意思決定者の存在に掛かっている。

個人的にも現在、統合アプローチ型サービスを考えているが、立ち位置・方向性の設定と拘り抜けるかを見つめ直す必要がある。

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