2012年2月8日水曜日

リスクと不確実性

10年ほど前にアメリカ出張の折、ある方の自宅に泊めていただいた事がある。なんとも余裕のある時代で、ある意味情報収集だけを目的に出張することになった。(その当時は名前しか知らなかった)今の上司の代理で。

単純に目的地に向かうだけだと面白くないので、スタンフォード大でのサマースクールのようなものにエントリーしてみたり、近くのベンチャーやVCを訪問したりと、色々組み合わせて計画した。以前にもエントリーした事があるが、そこで出会ったVCの方に「ビッグピクチャーを描かなければならない」と言われた事が、常に頭をよぎる。

その出張のメインであった訪問先で、ディスカッションに参加したり、ワークショップを開いてもらったりして、今思うと、何だか良く分からない3日ぐらいを過ごした。その最終日に、そこのボスに「うちに来い」と言われ、ホイホイと付いていった。

その後10年ほど、海外出張なるものは経験していないので、あの時の会話は夢のようでもあるのだが、なぜか割とスムーズに話をしていたような記憶がある。自宅へ向かう車中や、家についてからも。

その当時、複雑系という言葉が割と流行っていた。サンタフェ研究所では得体の知れない研究が進められ、それはそれなりに世間を賑わしていたように思う。そして、建設業は複雑系の体系に当てはまると思っていた(今も思っている)。というのも、建設現場の基本的な構成には以下のような特徴があるからだ。(1) 一人のリーダーが全体を知っていて、残りの人は部分だけしか知らないし、知る必要がない。(2) 日々変わりゆく現場状況を、情報を共有しながら全体最適を目指している。(3) 部分しか知らない各プレイヤーは工程上の隣のプレイヤーを確認しながら、自分の行動を決定していく。

で、「建設業の施行現場は複雑系なので、そういう捉え方をした方がいいと思う」というような話の中で、そういったことの「リスク」を、どのように定量化していくかが今後の課題だ、と言ったような気がする。そんな難しそうな話を今、英語でしてみろと言われてもできないが。その時は、広い庭のグリルで大きなトラウトを焼きながら、そんな難しい話をしていた。無粋にもほどがある。

その時に、リスクと不確実性を分けて考えなければならない、と言われた。正確には、「おまえが言っている事はRiskなのか、Uncertaintyなのか」ということだった。そう考えると、リスクと呼べるほど、まだ固まったものではないし、どちらかと言えばUncertaintyなんだろうな、と感じた。リスクという言葉を結構安易に使っていたが、初めて不確実性という概念に触れた瞬間だったように思う。

その後は、その方のご家族と食事をして、まだ小学生だった下の子の超ハイスピードスラングを理解できず、たぶん高校生ぐらいだった上の子のピアノを聞き、納屋に泊めてもらった。次の日に起きると、その方は既に起きており、「これからヨットに乗りにいこう」という事になり、生まれて初めてディンギーに乗って、少し練習した後レースを楽しんだ。

あの出張って何だっただろう。会社的な意味を考えると訳が分からないが、でも、個人的にはすごく収穫の多い、実りある出張だったと思っている。

0 件のコメント:

コメントを投稿