2012年9月26日水曜日

PassbookとMecke

iOS6に搭載されるPassbookという機能がある。チケットを統合管理できるもので、その中身は非常に単純なものだ。

飛行機や演劇等のチケットをバーコードで管理するためのプラットフォームに過ぎない。iPhoneが持つプラットフォーマーとしての市場の大きさと、エアチケットなどで既に実装されているというバーコード管理の実績が、その展開の鍵を握る。

NFC(近距離通信:日本ではFelica/Suicaが有名)と比べて極めてローテクなバーコード(しかもリーダーですらない)チケットの管理について、多くの新し物好きは不満を持っているだろう。Android端末はおろかほとんどのガラケーですらNFCを実装している中、今頃エラそうにバーコード管理かよ、と言う意見も分からなくはない。

それに対するフィル・シラーのコメントは、個人的には非常に共感できる。

「決済システムと連携することなく、Passbookのみで、ほとんどのユーザーのニーズを満たすと考えています。NFCがユーザーが抱えている問題を解決するのかははっきりしません。Passbookでユーザーに必要なものを提供できます。」

「非接触充電に対応したとしても、非接触充電の仕組みそのものが電源に差し込まれる(プラグインされる)必要があります。そのため、非接触充電を採用することで、利便性が向上するのかはっきりとしません。広く普及しているUSBであれば、どこでも(飛行機の中でも)差し込んで充電ができます。多くの場合、新しいプラグインが必要なコードを作ると、煩雑になります。」

つまり、高度技術がすぐにライフスタイルを変える訳ではない、ということだ。ユーザーにしてみれば決済とチケット使用は一体である必要は無く、非接触充電もインフラにならない限り利便性が必ずしも向上するとは限らない。

実はMeckeを考案した時も同じ事を考えていた。MeckeはQRコードを使ったサービスだったが、よくNFC(Felica)に対応してはどうか、そうでないと目新しさがない、と言われた。

その時、NFCに対応する事は何らかの負担をユーザーに強いることになる、それに対応できるのは一部の新し物好きだけで、多くの人にとっては面倒な事になるに違いない、と訴えていた。だからMeckeは何と言われてもQRコードでなければならないと考えていた。ユニバーサルな商品、インフラになるサービスとはそういうものだろう。使用のハードルが低い事が非常に重要だと、今でも考えている。

だからAppleがPassbookを提案したとき、そして、フィル・シラーのコメントを目にしたときは非常に共感したし、自分の考えの正しさに確信を持った。

昔、知り合いだった人が非接触充電を扱おうとしていたが、未だに鳴かず飛ばずで、既に5年ぐらい経つ。むべなるかな。

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