2011年11月11日金曜日

比較優位の原則

TPP加盟への肯定意見として、比較優位の原則を持ち出す人も多い。確かに単純化した理論上はその通りだろうが、成立条件として、A国で作られた工業製品はB国に、B国で作られた農作物はA国に渡らなければいけない。そうでないと単に供給過剰になるだけだろう。

工業製品が得意なA国と農業が中心のB国は言ってみれば、A国:先進国、B国:新興国、といっていいだろう。A国で作った工業品を買えるほどの経済力がB国にあるのだろうか、そして、B国で作った農作物を受け入れるだけの文化の共通性はあるのだろうか、という気がしている。

そんなのB国に合わせた工業製品をA国が作ればいいだけだ、と言うかもしれない。生産量としてはそうかも知れないが、ペイするのかと言われると、少し怪しいような気がする。B国の農作物はもっと難しくて、文化が合わなければインパクトのある貿易量にはならないだろう。A国に合わせて品種改良するぐらいなら生産性の高いA国で生産する方が安くなることだって考えられる。

日米のコメ問題を例にとっても、大規模農業で中粒米の得意なアメリカと、小規模農業で短粒米中心の日本でコンフリクトが起こるとは思えない。

TPPに加盟したらコメが壊滅するという典型的なTPP反対論者の意見は、マクロな比較優位をベースとしたもので、コメの生産量と価格をザックリと比較すると、このような結論にはなるだろう。一方、TPP賛成論者は、高品質な短粒米しか食べない日本のコメにおいては、国内産の優位性は変わらないとする、ミクロな比較優位に基づいて反論する。(エキセントリックな意見としては、マクロな比較優位を採用しつつ、国際競争力のないコメは壊滅してしまった方が良いと言ったりもする。)

論理的には比較優位で方がつくが、実際には諸処の条件から、教科書的な比較優位に基づく自由貿易がもたらす産業の棲み分けなんてほとんどない、というか自由化を待たずして農業は、既に平衡状態に近いのではないか。

とすれば、農業において自由化するメリットはなんだろう?そして、自由化のデメリットはないことになるのかな。

結論なし。

0 件のコメント:

コメントを投稿