2010年7月19日月曜日

アンチ産業構造ビジョン

6月に出された「産業構造ビジョン2010」の中で、韓国との比較をした上で、一社あたりの国内市場が少ない事を指摘している。最近、よく聞かれる議論だと思う。

この議論の帰結は、多すぎる企業もしくは事業領域は積極的に合併や統廃合、要は整理する必要がある、ということだ。

数字のお遊びとしてはYesと言えるが、一方で実際的な効用としてはNoとも言えるのではないか、と感じている。

つまり、日本企業が創り出す製品、サービスに何を求めるかが、大きな判断基準になると思うのだが、企業なり事業を整理した場合に、そこから生み出される商品なりサービスは、国際競争力を持ち得るのか、という疑問がある。

韓国を範として、国内市場を一社もしくは少数の企業で寡占化することは、国内競争をグローバル競争に置き換えるだけで、結局はより厳しい競争環境に身を置くことになるだけなんじゃないか、と思う。

従来の日本国内の競争は、一見消耗戦なんだが、他国に類を見ない品質向上、オリジナリティの追求につながる土壌ともなっていることを忘れてはならない。

飲料品、お菓子から家電や携帯電話などを見ても分かるように、ガラパゴスと言われる一方で、日本国民は非常に大きな選択の自由を得ている。しかも、世界的にトップの技術が、比較的安価で選り取りみどりな訳だ。

つまり、過当競争が差別化や顧客満足につながる商品開発や企業努力を促していると言える。企業や事業の統廃合は、我々からこういった選択の自由を奪うことになる。

そして、企業にしても、これからの競争相手は韓国、台湾、中国のローコスト商品だ。それこそ企業体力は再起不能なまでに削ぎ落とされ、労働市場、雇用環境はボロボロになることが予想される。

ローコスト商品は他国に委ねて、高機能、高収益商品に特化すればいいじゃないか、という意見もあると思う。が、国内市場での消費者の厳しい目をくぐり抜けるというプロセスを経なくなった商品が、どこまでグローバルな消費者の支持を集められるかは疑問だ。

私たち日本国民は、高レベルで多様な選択肢を経済発展の、ある意味副産物として自然に得てきた。その過当とも言える国内市場の洗練を受けた商品が、グローバル市場の厳しい評価をものともせず、躍進してきた事実を考えると、行政がするべき事は、企業もしくは事業の統廃合ではないだろう。

国内競争とそれに伴う商品開発が維持できるよう税制などで支援する事、グローバル市場の中に漕ぎ出すための手助けをする事、著作権なども含めた知的財産をしっかり守る仕組み、体制を作る事。

そういった事が、企業もしくは事業の整理を促すといったお節介な施策よりも強く求められている。

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