2011年7月4日月曜日

127時間

先月の「岳〜ガク〜」に引き続き、山の物語。
正確には山ではなくアメリカはユタ州に広がるキャニオンランズという国立公園で、物語というには余りに生々しいドキュメンタリーかな。

山や岩や渓谷が好きな人っていうのは、皆、自由を追い求める人として描かれる。漫画で言えば釣りキチ三平も同類だろうか。多くを捨てて、自然と向き合う。その道程には多かれ少なかれ冒険が含まれ、それゆえ、サバイバル能力に長けている。

そんなサバイバル能力に過信した男の、残酷な127時間が、ストーリーの全てだ。

荒野を自在に動き回るだけの、知識と能力を持ち、その荒涼たる大地を第二の故郷と言って憚らない。秘密の地底湖へダイブしたり、さながらプライベートビーチのような遊び方を楽しんでいる。

大きな誤算は、そこは管理されたプライベートビーチではなく、人気の少ない危険の潜んだ渓谷だということで、自信に満ちあふれた男は、そこに行く事を誰にも告げずにいたことだ。

いつものように新しい景色を探して渓谷を駆け回っている最中、足下の岩が動いて足を踏み外した。ここまでは、ある程度想定済みで、そこからリカバリーできる身体能力があると信じていた。

ここでもう一つの誤算が生じる。自分と一緒に落ちた岩に、右腕を挟まれてしまうのだ。既に手首から先は潰れてしまっている。何とか助けを呼ぼうにも、人気の無い渓谷。誰も来るはずが無い。

様々な手段を使って脱出を試みるが、いずれも失敗。水も食料も無くなり、段々と精神的にも追いつめられ、幻覚を見始める。腕の切断にもチャレンジするが、安物のナイフでは鍛えられた筋肉が切り裂けない。突き刺しても骨にあたり、どうにもならない。120時間を越えた頃に意を決して、腕の切断に再挑戦。大きな苦痛を経てようやく成功し、無事救出される。

自分の能力を過信した男が主人公だが、確かにその高い能力のお陰で、127時間に及ぶサバイバルが可能だった。普通の人なら、すぐにダメになってしまうだろう。

それにしても、なぜ127時間も掛かってしまったんだろう?
同じ立場になってみないと分からないが、1日目が過ぎた辺りで、取り得る選択肢はほとんど無かったはずだ。岩が削れる見込みはなし、遭難届けが出て救出される見込みもなし、水や食料が増えるはずもない。時間が経てば経つほど、不利になる事は目に見えている。たぶん、普通の人なら127時間ももたないけど、24時間ぐらいで、右腕切断の意思決定はしていたんじゃないかな、と思う。

ドラマではあるが、前回見た「岳〜ガク〜」では、遭難後半日ぐらいで足を切断している。条件は全く違うので参考にはならないし、自分がその状況に置かれた場合に腕や足を切れるかというと、ムリかも知れない。ただ、能力があるがゆえに起こってしまった事故とサバイバル体験だったと言えるだろう。

肉体的・精神的に追いつめられて行く様子と切断のリアリティが、よく描かれている映画だった。少しリアルすぎるので、お薦めしにくいが、血を見ても大丈夫な人は、見ても良いかも知れない。

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