2011年7月11日月曜日

進むべき道を選ぶ時

日本は一つの岐路に立っている。原子力の問題は言うに及ばず、さまざまな問題が重なり合って、相乗的に押し寄せている。

たぶん一つの拠り所とすべきなのは価値観だろうが、今、その価値観が揺らいでいる。というか、今まで価値観を意識してこなかったことのツケが回ってきている気がする。単一民族の欠陥といっても良いだろうが、国民が価値観を共有している気になっていて、改めて意識することがなかったし、そもそも価値観を脅かされるような事象が起こる事もほとんどなかったんだろう。

近代では唯二の事象として、明治維新と第二次大戦があって、どちらも欧米の価値観をぶち込まれたわけだが、それとても日本人が共有していた価値観を塗り替えたというものではなく、新しく新鮮に感じた価値観に、ある意味寄り添ったという方が正しいように思える。

ヤマト運輸の小倉元社長の著書「経営学」では、30才を過ぎた頃、静岡運輸に出向した時のエピソードがある。経営改善の為に見学した木工の工場において「安全第一、能率第二」と書いてある壁の張り紙に注目する。この工場の経営者は、「安全も能率も、どちらもしっかりやれと言っていた時分は、結局どちらも中途半端でしたね」と語る。静岡運輸に帰って「安全第一、営業第二」のモットーを掲げ、安全運動を推進したところ、事故は減り、営業はむしろ活発になったという。その後、ヤマト運輸でも同様の運動を推進し、安全と営業を両立していったのである。

『どんな工場にいっても「安全第一」の標語が掲げられていないところはない。しかし安全第一の言葉は、マンネリの代名詞のようなもので、どれだけ実効を上げているか疑問である。というのも、第二がないからである。(小倉昌男著 経営学 p.145)』

今現在日本が置かれている状況も良く似ている。経済と安全を両立させようと思ったら、一方を第一に、他方を第二に、明確に位置づけてあげる必要があると思う。それをしてようやく議論が前に進むし、ゴールが見えてくる。

別に、経済や安全でなくてもいい。環境でも良いし、自然でも歴史でも外交でもなんでも良い。とにかく優先順位をつける事が大事で、それが日本人の価値観を定義することだろう。そして、それをなくして状況が好転する事はあり得ないと思う。

既に、今までのように曖昧で済んだ時代は終わった。そろそろ、進むべき道を選ぶ時だろう。何を第一にして、何を第二にするか。それが全てを決める。

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