2010年5月28日金曜日

自由と苦痛

先日、アップルがマイクロソフトを時価総額で抜いた、というニュースを読んだ。かつて、アップルがにっちもさっちも行かなくなった時、マイクロソフトに1.5億ドル出してもらった事を考えると、隔世の感がある。改めて、ジョブズの感覚の鋭さ、ギリギリ現実的な解を見つける能力の高さに驚くばかりだ。

夢を追いかけるためにライバルから金を借りれる人は何人ぐらいいるんだろう。

ハード(Mac/iPod/iPhone/iPad)、OS(MacOS/iPhoneOS)、ソフト(iLife/iWork)、サービス(iTS/AppStore/MobileMe)、そして経営に関しても、幻想と現実の谷に挟まれた、本当に狭い狭いイノベーションの尾根を歩き続けている。実際、どの製品も最初は大多数の批判から始まっている。初期段階から肯定が多数を占めるのはiPadぐらいじゃないか?

これは、皆の感覚が追いついてきたのか、ジョブズの感覚がより現実的なところに落ち着きつつあるのか、単に皆がアップルを盲信してるだけというブランディングの勝利なのかは分からない。

そんなアップル製品と十数年付き合ってて、しみじみと感じるのは、アップル製品はできる事が少ない、という事だ。非常に限られた能力/機能しか持っていないのが、アップル製品の特徴だ。ハードが限定され、使えるソフトもさほど多くない。OSも拡張性に乏しい。言い換えれば、ユーザーに自由はない。

でも、その環境が必要十分であれば、自由のなさに不自由さを感じることはない。むしろ迷いがないので、使いやすい。アップル製品には、利用しないボタンやポートが一切ない。なので、アクションを起こす時にあれを押すか、これを引っ張るかと迷うことはない。この不自由さが、便利さ、気持ちよさを作り出している。そして結果として、自由を生み出している。

アップル製品は、よくできた塗り絵なんだ。誰でも用意された広さを一杯に使える。色や余白の使い方で個性も発揮しやすい。

何も書かれていない真っ白で広大なキャンバスに、それに見合った絵を描ける人は、本当に一握りだろう。ほとんどの人は、その広さも白さも利用できず、隅っこでせせこましく落書きするぐらいしかできない。

自由を享受するには、本当に大変な苦労が伴う。時には苦痛と感じることもあるかもしれない。自由を欲して、何でもできるよう作られたWintelマシンは、結果として不自由さを生み出していることに気づくべきだ。

Kozchiも非常に機能を限定したサービスだ。多くの人はメールではなくWebを使った方が良いのではとか、アクセス解析できないと、とか言うが、当面不要だと考えている。シンプルな解こそが正しい道であり、不自由さのない制限された環境を目指している。

Connecting the Shops.
http://www.kozchi.jp/

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