2010年10月20日水曜日

古い会社の作り直し方

アカデミーヒルズのモーニングセミナーに行ってみた。8時から始まるセミナーで、六本木ヒルズ49階で開催。

講師は日本交通のタクシー王子こと川鍋社長。経歴がすごい。お坊っちゃまとは、こういう人なんだな、と思う。幼稚舎から慶応。卒業してケロッグ大学院でMBA取得。帰国後、マッキンゼー入社。満を時して日本交通へ。

まず、子どもを幼稚舎から慶応に行かすというのは、若くして財を成すか、ある程度の企業の(少なくとも)二代目にしかできない選択だろう。

そう考えると三代目が家業を潰してしまうのはよく分かる。二代目までは割と苦労した時期を知ってるし、何とか伸ばしていこうという気持ちも強いだろうが、三代目ともなると生まれた時からそれなりに裕福で、既定路線としての事業承継があり、事業を伸ばすことへの執着が弱くなりがちだろう。川鍋社長も、物心ついた時から会社を継ぐことになってたらしい。

だから川鍋社長はダメという話ではなく、むしろ、この経歴と社長としての施策を伺うと、「初期値としての環境」がDNAとして、人格形成にも社風形成にも影響を与えることがよく分かった。

川鍋社長は、MBAホルダーのコンサル出身らしく、社長就任当時は、かなりドラスティックな改革を目指していたようだ。そして、紆余曲折を経て、現在の手法に行き着く。

紆余曲折の鍵に二つの活動がある。一つは自ら運転手となって一ヶ月間勤務したこと。

タクシーの運転手がどんな気持ちで運転しているか、経営していく上で、従業員と目線を合わせるのは重要だろう。ただ、この行動は本になってしまうくらい、常識外れだったようだ。

ここで、様々なことを学ぶことになる。客席は怖くて見れないが、声は良く聞こえてくるとか、大半が良いお客さんでトラブルになるようなことはほとんどないとか、空車で走ってる時の不安感だとか。

そして、もう一つが東京駅前で実施したアンケート。

「どうしてタクシードライバーになったのか」の質問には「他に適切な仕事がなかったから」、「どうして、このタクシー会社を選んだのか」と問われると「家の近くだった」「知り合いが勤務していた」と、消極的回答が目立ったそうだ。何となく、タクシードライバーと建設作業員の属性は似ていると感じたり。

その後、川鍋社長が取った施策は、従業員をクラスタリングする事だった。

勤続年数が長いと、どうしてもオレルールができてしまい、新しい施策を受け入れる柔軟性を失ってしまいがちだ。比較的柔軟に会社ルールを受け容れられる勤続年数の短い社員と、そうでない社員を同列で管理するのは効率が悪い、という事だろう。

つまり、ルールを作ったり、改善を行ったりする際の管理の厳しさに差を付けた。若い社員は厳しく、年配の社員は若干緩めに管理基準を設定するという、傾斜管理を導入する事で、会社ルールを無理なく浸透させることに成功しつつあるように理解した。

結局、会社のDNAって、こうやって作られていくんだろう。環境変化の初期段階で受けた刺激がそのまま、その環境に対する対応方法になっていく。

ルールの弱い部署で育った人にとっては、会社というのはルールが弱い場所だし、厳しいルールの下で育った人は会社は厳しいものだということになる。

つまり、若年者に対してどういった教育を施すかが、その会社や組織のDNAとなる訳だ。人格という面においても、子供の頃、特に幼い時分に受けた教育や躾は、そのまま受け継がれていく。

「三つ子の魂百まで」は、個人にとってもサラリーマンにとっても当てはまる方程式で、基本的に一方通行なので、入り口を間違うと、後戻りすることには多大な困難が伴うことは、想像に難くない。

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