2010年10月29日金曜日

マイレージ、マイライフ

面白かった。肩肘張らずに見れる、割と好きなタイプの映画だった。5点満点中3.5点。

一年のうち322日出張しているリストラ宣告人って、そんな職業があるのかな?当然、結婚もしていないし、人間関係は希薄。コミュニケーションは携帯電話とメール、という感じ。身軽な身上を武器に講演までして、出張先で出会った女性と一夜を楽しむ。職業にも生き方にもリアリティや生活感はなく、存在自体がとってもバーチャルな主人公。

唯一の楽しみは、出張に付随するマイレージを貯める事。今まで6名しか達成していない1000万マイルまであと少しとなり、買い物も食事もマイル換算されるもの以外は興味なし、といった感じ。

とにかく、見た事も会った事もない人々にリストラを宣告し、家族や将来などのリアルな戸惑いを吐露され、時には罵倒される日々。そんなリアルを丁寧に受け止めながらも、マイレージというバーチャルな価値を追求する日々。そんな達観した人生を送っていることをネタに、バックパックで背負うものを取捨選択して、身軽に生きましょうと講演する日々。

この完成されたループに不協和音をもたらす二人の女性。

もしかしたらリアルな喜びを与えてくれるかも知れない女性と、主人公の持つバーチャルな価値感を理解できずにいる部下。この二人とのやり取りををきっかけにリアルを模索することになる。今まで疎遠にしていた家族との関係も徐々に修復し、リアルな人生への階段を一歩ずつ登り、そこに新鮮な喜びを感じていく主人公。

よし!バーチャルを捨てて、リアルに生きようと主人公が決心した途端、再びバーチャルな世界へ突き落とされる。そして、バーチャルへの落下中にその拠り所にしていた価値観にも終了の鐘が鳴る。1000万マイル達成。

リアルが破綻し、バーチャルは当面の価値を失った。たぶん、今まで通りには行かないだろう。これから彼は、何を生き甲斐に、日々を過ごしていくんだろう、なんて思ったり。

リアルに疲れ、バーチャルに依存し、その妥協点をどこに求めるかは、人それぞれだが、こういったリアルとバーチャルのせめぎ合いは、多かれ少なかれ誰にでもあるだろう。

そう、自分にもある。
一つのリアルから次のリアルへ飛び移ろうとする時、そのプロセスにはバーチャルな価値観が挟まることが多いように思う。逆に、一つのリアルに踏みとどまろうとする時も、そこではない何かバーチャルな存在に価値を見いだす事もあるだろう。

人は皆、リアル一辺倒でも、バーチャル一筋でも行きていけないんだと思う。そのさじ加減は人それぞれ。人の人生を横目で見ながら、自分の人生の糧にし、自分なりに修正するしかない。そんな事を感じた映画だった。

映画館もイイが、DVD+カウチポテト+ビールでゆったりと見たい。

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