2010年12月10日金曜日

成熟企業の3類型

企業は成熟してくると、その成長は3通りに分かれる。

一つは国内GDP追従型。
これは、インフラ企業や日用消費材メーカーなどが当てはまる。公共的で広く薄く国民にベネフィットをもたらす企業の成長は、おおよそGDP推移と同じような傾きを持つ。具体的にはJR東日本や東京電力などのインフラ企業や、資生堂のような化粧品メーカーなどが、その代表例だ。GDPは国の経済活動を表しているのだから、当然だろう。

日本のGDPは漸増してはいるが、その傾きは米国などの先進国に比べても低く、中国やインドに代表される新興国とは比べるまでもない。昨今では傾きがさらに低下し、成長率がほぼ0に近くなっている。つまり、このラインに乗っている企業は、極めて安定的ではあるが、成長も期待できないことになる。

もう一つは日経平均株価追従型。
日経平均株価は企業の活性度や将来性を表している。このグラフはピーキーである上に追従する企業は数年の後追い傾向があるので、5年ほどの移動平均を取ると、グラフとして見やすくなる。当てはまる企業は先にも書いたが、後追いする企業、すなわち請け負い型の企業ということになる。代表的なのはゼネコンだが、装置型や土地活用型の企業の調子が上がり、内部留保金が溜まってくると、新たなる投資を行うことになり、そのタイミングでゼネコンに仕事が回ってくる。つまりそういった類いの企業が日経平均株価追従型ということになる。

日経平均株価は、1989年のピークをもって下がり続け、何度かの底打ちをしたあと低位安定を続けている。かつては、国内設備投資比率もそれなりに高かった訳だが、昨今の事情から海外投資比率が上がる傾向があり、請け負い型産業も同時にグローバル化できない限りは、日経平均株価を下ぶれする傾向が年々強くなるだろう。

最後が、グローバルGDP追従型。
これはグローバルGDPの設定が極めて恣意的になるので、グラフとの相関にはほとんど意味が無いが、要は市場を海外に求めて、海外販売比率を高めている企業ということになる。すぐに思い付くのはトヨタやソニーといった企業だが、いわゆるベンチャー企業も同じような右肩上がりグラフになる。つまり、成熟産業として海外の未開市場へ向かうか、新規産業として国内の未踏市場を切り開くかの2者が取り得るグラフということになる。

この3類型をどのように読み解くかはなかなか難しいが、将来を読取る事はできる。少なくとも国内GDP追従型は水平、日経平均株価追従型は下向き、グローバルGDP追従型は上向きの売上傾向があることは確かだろう。

国内GDP追従型は現状維持でしかないので、その状態を良しとすれば、人の出入りをコントロールするだけで企業の継続は保証されるだろう。日経平均株価追従型は中長期的にシュリンクしていく事は明確なので、リストラを行ない、シュリンクする市場環境に企業サイズを合わせて行くか、相対的に巨大化する企業サイズに合わせて新しい市場を探すか、しかない。

結局、上向きを目指すならば海外の未開市場に向かうか、国内の未踏市場に向かうしか手は無いのだ。

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ではここで、従来の建設市場の枠組で海外において未開と言える市場があるのかと問われると、かなり厳しいと思う。従来の建設市場というのは、人海戦術で人・モノ・金をコーディネートするマネジメント業務を指す。しかも、日本の建設会社はマネジメント手法を体系化していないし、国際標準的な役割と権限を明確にした仕事の仕組みを持っていない。そういったドロドロしたマネジメントは、たとえ新興国であっても既にある市場だと思う。要は未開じゃない。

とすると、海外未開市場は建設マネジメントの体系化に置換えられる。もう一つの、スマートグリッドやESCOのような未踏市場へ国内、海外問わずチャレンジするという選択は、先のエントリーにあるビジネスの4類型において(3)に位置づけられる建設業として、会社がひっくり返るような選択肢なので、会社を潰す覚悟が必要になる。すなわち、リストラと同等だ。いや社内の既得権益者からするとリストラ以上の選択肢だろう。

結局、現実的に取り得る選択肢は緩やかなリストラによって生き延び、建設マネジメントの体系化によって将来の海外未開市場へ備えることぐらいしかできないのではないかと思う。生き延びた先に海外未開市場に可能性があるかどうかは不透明だが。

何の備えもないまま、海外未開市場と国内未踏市場へチャレンジするフリをすることは、船底に穴の空いた船が、乗組員に悟られないように、霞の向こうに見える島を目指そうという、幻想へのムダな努力に等しい。霞が晴れない内に沈むのが関の山だろう。

解決策は会社を二つ以上に割る事しかないと思う。建設事業をスリム化して生き延びるとともに建設マネジメントを極める会社と、新しい事業で身を立てる事を目指す会社に。どちらも厳しいね。。。

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