2010年12月17日金曜日

仕組みを仕掛ける

昨日、18:30〜21:10まで新丸の内ビル10Fで開催された地球大学に行ってみた。面白そうなテーマの時だけ、ちょこちょこと受講しているが、ファシリテーターの竹村先生が話し好きで、いつも時間をオーバーするのが特徴の講座だ。

共通のテーマとしては「都市と環境」という感じで環境問題にフォーカスした講座だけど、今年は特に都市で何ができるか、ということを取り上げているようだ。

毎回二人の方に講演して頂いて、竹村先生がまとめる、という形で進めている。ちなみに前回は、「21世紀のエコ・モビリティを求めて── 自動車社会のリデザイン」ということで、慶応大のEVを作っている清水教授とNPO自転車活用推進研究会(自活研)の小林事務局長のお二人の予定が、清水教授とのアポイントに手違いがあり、結局、小林事務局長のみになる、という何とも自由な講座だ。この講義も、すごいインパクトがあって、目から鱗という感じだった。

今回は「循環型社会のデザイン~都市型3Rの可能性」と題して、インダストリアルデザイナーの益田氏と環境NPOオフィス町内会の半谷事務局代表のお二人のお話をお聞きすることになった。

リアルにモノや仕組みを作り上げている人の話は、本当に目から鱗が落ちる。それも何枚も何枚も。それだけ、やりきる事の充実感、作りきることの難しさ、周りを巻き込む事の大切さが伝わって来た。どちらの方も大変興味深かったのだが、特に良かったのが質疑応答の中で得られた回答だった。

「森の町内会活動で得られるJ-VER(環境省のCO2クレジット)は林業従事者のモチベーションに寄与しているか?」という質問に対して、「もちろん寄与していると考えている。森の町内会活動として得た15円/kg(8,325円/m3)は、そのまま間伐材を伐採し運搬する費用として森林組合にお渡ししている。実は、間伐材は3000円/m3程度でしか売れないので、国が補助金を入れても採算ベースに乗らない。森の町内会から、間伐材の販売代金の2倍以上をお渡しして、ようやく林業ビジネスとして回せる程度になる。それに加えて、間伐によってJ-VERクレジットを得る事ができた。そのJ-VERクレジットは先のCOP10の中で、会議で出るCO2をキャンセルするための排出量取引として使ってもらうことができた。さらに、そこで得られた資金を「キッザニアの森」の運営に回し、子ども達に、森の大切さ、森を守るためには間伐材を伐採したり、枝打ちをして整備してあげなければいけない、ということを教える教育に使う事ができた。」と答えられていた。

何というループ。
詭弁のようなCO2クレジットを本当に役に立つもの、しかも未来に投資できるなんて。資金を紙代から集め(しかも印刷代という中にまぎれさせることで、ユーザーから見ると1%のコストアップにしかならない!)、森の育成と子供の教育といった未来へ投資している。こんなに善ループが回る事ってあるんだろうか、と感じた。

まさに、仕組みの勝利だと思う。
今後も回っていくのかどうかは不透明だが、とにかく取り組みとして完結しているのが素晴らしい。

この2回の講座で、NPOの両社の方は本当に上手に仕組みを作っていると感じた。そして、大いなる大義と乗りやすい仕組みがあれば、人は動くものだとも感じた。

ゼネコンは、モノも仕組みも作らない。モノや仕組みを作る事のお手伝いはするけれど。なぜならリスクを取りたくないから。その姿勢からイノベーションを生み出し、世の中を良くする事ができるとは思えない。リスクを取った、もしくはリスクを最小化する仕組みを作り上げて、薄く広くリスクを分担させる事ができた組織こそが、世の中を変えていくんだと、痛感した。

モノか仕組みを作るような仕事をしなければ、現状引かれているレールの上を走る事しかできないし、それでは世の中を変える事に主体的に関わったとは言えないのではという、そんな事を感じる講義だった。

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