2010年12月6日月曜日

ビジネスの4類型

ゼネコンの仕事を俯瞰してて気付いたのは、ビジネスは大きく分けると4つしかない、ということだ。

(1) 仕組みづくり
(2) モノづくり
(3) (1),(2)のサポート(技術的支援)
(4) (3)のサポート(リソース供給)

この4累計は生態系のような関係を持っており、それぞれ下の領域を包含している。つまり、仕組みづくりは内部にモノづくりを含んでいることが多い。そういったモノを作る上で内製化された技術だけでなく外部の支援や提案が必要になる場合がある。それらの提案を具体化するためには、主にリソースとしての下請けの協力が欠かせない。そのような関係性の中で、ゼネコンは(3)に該当する。

これら各類型において、必要となるスキルセットはそれぞれ異なる。

例えば(1)では、今までに無い仕組みを作って広く世間に認知させるためには、広がりや可能性や説得力を持った案を作る構想力が最も大切で、また、その仕組みを構成する技術のリストを漏れなく並べられなければならない。特に、初期においては具体的な形を持たないので、ほとんどのリソースを外部から持ち込む必要があるため、バランス感覚が不可欠だろう。また、新しい仕組みの周知にはマーケティングやコミュニケーションの網羅的な理解が求められる。

(2)は、具体的なモノをもって売り歩くという非常にベーシックなビジネスであるが、何を作るかは、当然ながら非常に重要である。あるレベルまでは在庫を持つ必要があるだろうし、大きな設備投資をしなければいけないことも多いだろう。(1)と同様の構想力を必要とし、そこに含まれる技術の裏付けを持っている必要がある。つまり、(1)に比べて技術の部分を内製化することで短期的なコストとリスクを抱え込む反面、先行きの応用展開も含めた長期的なベネフィットを期待することができる。

この両者は、コスト、リスク、ベネフィットのいずれの観点においても一長一短あり、一概にどちらが良いとも言えないだろう。

(3)は、あくまでも(1)や(2)を具現化するために必要な機能を提供するのが役割だと考えると、必要なのは構想力ではない。極端に言えば「設計力」「製造力」「調達力」の3つだけだろう。(1)や(2)から降りて来た要件に対して、どうやったら実現できるかについて、知見や能力を持っている事が大事だ。(4)は(3)の中の限定部位に対する「設計力」「製造力」「調達力」が求められている。要は(3)をダウンサイジングしたものが(4)なのだ。

このように書くと、(1)と(2)、(3)と(4)の間に大きな溝がある事が分かる。

その違いは、発意とベースリソース(人、モノ、金、情報、技術、設備など)の有無だろう。(3)や(4)の領域にいると発意というものは必要がない。何かを作ろうとする人をサポートするためにいるのだから。例えば超高層マンションを作ろうと思うのは不動産会社で、自分たちでは作りきれないのでゼネコンに依頼する。並べ挙げればキリがないが、「こういう事を実現したい」と言い出す企業と「こういった事で具体化させたい」と思う企業に分かれるということだ。

当然、どの領域においても、うまく稼ぐ手だてはあるし、お互いに依存関係のある機能なので、優劣をつけられるようなものではないが、(1)と(2)、(3)と(4)の間には深い溝がある事は理解しておかなければならない。

(1)と(2)は場合に応じて入れ替わる事が可能だし、(4)が(3)のように振る舞う事もあるだろう。しかし、(3)や(4)の企業が(1)や(2)を志向することは極めて難しい事なのだ。構想を実現する能力を持っているので提案するけれども具体化するリスクを負いたくないといった会社に、発意と覚悟を求める事は不可能に近いんだと思う。ゼネコンの脱皮が難しいのは、単純化するとそういった理由で、(3)にカテゴライズされる企業だから、だということだ。

これから就職を考える人は、この(1)〜(4)の類型の内、どういった事をしたいのかを考えた方が良い。最低限でも(1)、(2)か(3)、(4)のいずれを志向しているかは理解しておくべきだろう。

自分の志向と立脚点が異なると、悩み苦しむことになる。特に(2)と(3)の溝は深いので、(3)に就職して、(1)や(2)の事業を目指すのは最低だ。>オレ

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