2010年12月13日月曜日

海外進出志向は正しいのか?

土曜日に一橋大学政策フォーラムという催しに参加した。タイトルは「イノベーションと日本の活力」というもので、建築家の安藤忠雄や元三洋電機会長の野中ともよが出ていた。

場所は一橋大学で国立駅から徒歩5分くらい。国立は初めて来たが、非常に雰囲気の良い街で、JRの駅にしては一度住んでみたいと思える街だった。駅前のお店の集積度も、マチカドサーチエンジンには申し分なく、学生も多いので、展開にかなり期待が持てる土地柄だと感じた。

さて、本題の一橋大学政策フォーラムだが何せ、海外に出ろ、という傾向の話ばかりだった。最近の発言力の強い人は、日本で商売を考えるのは、もう無理だ。海外展開を図れ。モノを売るだけじゃなく、ましてや作るだけじゃなく、システムとしてマネジメントや管理運営も含めてトータルパッケージとして輸出せよ。そして、海外で稼げ。という論調の方が非常に多い。

言っている事はよく分かるのだが、いい加減閉口する。本当に皆がこぞって海外で生計を立てる事が正しい事なんだろうか?

もちろん程度問題はあって、引きこもりすぎるのは良くないと思う。世界は広い。日本の製品やサービスが海外で受け入れられる可能性は、日本で海外製品が受け入れられるのと同等程度にはあるだろうから、何も無視する必要はないだろう。ゼネコンのように、売り上げが漸減する事が目に見えている産業にとって活路を見出す先が海外、というのは選択肢の一つとして十分にあり得る。準備が整っているかは不明だが。

でも、誰でも彼でも海外に向かう事が正しいとは思えない。誰も彼もが海外進出した際の国内の様子ってどんな感じだろう?生産労働人口の大半は海外に向かうということは、その家族も一緒だろうから、極端に言うと高齢者だけの国になる。そして、介護は老老か外国人労働者に頼ることになる、なんてことになったりして。つまり、老人だけが集まる未来のない国になる。言ってみれば日本全体が姥捨て山だ。

そうは言っても、飲食とかサービスとか、ある程度残っていかなければいけないから、こういった産業の海外進出はないとなると、こういった最近一般的になりつつあるこのような論調は、製造業にだけ向けたメッセージということなんだろうか?しかし、製造業で国内に拘っている企業って、そもそも無いと思うし、ターゲットとしては無意味だと思う。そうするとやはり、今は日本に閉じこもっている事業主体に向けたメッセージだとすると、電気、ガス、水道、鉄道といったインフラ事業者、ゼネコンといった、明らかにドメスティックでかつ市場がシュリンクしている産業と、モノは作ってるけどサービスパッケージ化できていない製造業、ということか。

インフラ事業者もゼネコンも、要はマネジメントの輸出ということだと思うが、いずれの会社も海外進出を目指してなかったので、マネジメントの体系化ができていないように思う。つまり、これから。そして、サービスパッケージ化できていない製造業というのは、他企業とのアライアンスも必要だろうから、互いにWin-Winのアライアンスを構築するにはまだ少しの時間が必要だろう。

う〜ん。総論として世界にも視野を向けた方がいいという意見は納得するが、誰に向けたメッセージで、こういったことの発言者は日本がどうなることを期待しているんだろう?ユニクロの柳井さんが、自分の会社のように、という気持ちは分かるが、実際そういった行動が必要な産業と不要な産業がある訳で、誰にでも世界に行けといっても意味が無いようにも思える。

結局、世界に目を向けろという人は何も言ってないのと同じだろう。目を向ける人は向けるし、向ける必要の無い人は向けない、と。一橋大学出身の三木谷社長率いる楽天も、今までは国内でしか活動をしていなかったが、国内市場がサチってしまって、これ以上の成長を望むには海外しか無い、という成熟しつつある企業ならではの海外進出だったように思う。なので、無闇に海外進出を促す、こういった無為なメッセージよりは、どうやったらより良い社会が作れるか、という事を広い視野で考えよう、という方が正しいように思える。

まずは目の前にある課題、不満、不合理などを解決することに注力するべきなんじゃないかな。その先に世界があれば、世界を目指せば良い。スマート○○○のように、ありもしない課題に向かって、無理矢理解決策を提案して、大いなる無駄を排出するような事は愚の骨頂だろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿