2011年12月21日水曜日

共感できない"自炊"反対

有名作家が集まって、"自炊"業者を提訴した。

自炊そのものは違法ではないが、第三者が代行するのはダメということ。そして、自炊後のデジタルデータもそうだが、自炊に供した原本がネットで販売されている実態もあり、商売の危機を感じる、と言うことだ。

ある意味正しいが、新しい時代に対応したくない人たちの戯言とも思える。

多くの人が知恵を出し合って作るという本の価値を毀損する、と言っていた人もいたように思うが、そういう人にとって、ハードカバーと単行本の違いは気にならないのだろうか?紙質も装丁も一頁に収まる文量も違うのに。

作家という職業が成り立たなくなる、と言っていた人もいたが、それは、自分の作品が多くの人に読まれたいという欲求よりも、それがおカネに変わらなければ意味がないという欲望が上回っている、と言う事なのかな?綺麗事で言えば、おカネはさて置き、自分の作品を多くの人に読んでもらいたいという、クリエイターの本能のようなものがまずあって、その作品に応じた適正な対価が貰えればハッピー、という感じではないだろうか。

とは言え、職業が脅かされ、作品が軽んじられる可能性があるという不安は、理解できないことはない。

一方で、電子書籍の未来は不透明だと言ってしまうのもどうかと思う。しかも、不透明だから乗れないという。それではいつまで経っても透明度が増すことはないだろう。透明にならなければ棲めないといった、環境変化に対応しようとしない魚は生き残ることができない。ただ、泥の中で餌を見つけることもできず、息絶えるだけだ。

ではどうするかというと、スティーブ・ジョブズとiTunes (Music) Storeの顛末が参考になるのではないか。当時、違法コピーが横行し、P2Pソフトによって蔓延していた状態で、誰もが音楽の電子配信は不透明だと思っていたし、産業、市場として成立すると思っていなかった。その中でジョブズだけが透明化に向けた解を提案し、実践した。そして、それは今のところ正しい解のように思える。未だに日本の音楽業界は電子配信に及び腰だが、それが意味するものは産業としてのシュリンクでしかない。

同じことが本にも言えて、違法コピーが増えるから嫌だ、著作権を侵害しているというのは簡単だが、どうやったら違法コピーが減るのか、ということを考えた時に、自炊業者を提訴する事が解になるとは思えない。自炊せざるを得ないのは、電子書籍がないからで、違法に手に入れている人もいる反面、例えばアマゾンから自炊業者に直接配送して、電子化して手に入れる人もいると聞く。つまり、彼らは正規料金に自炊代を支払ってまで電子化しているのだ。そういった人たちのニーズに応えようともせず、ただただ、自分の権益を守りたいがために、提訴に踏み切るというのは、全く共感できない。

作家の仕事ではないかも知れないが、電子書籍の産業化、市場化を目指す必要があるし、電子書籍の将来性を探る意味でも作家だからできる事が結構あると思う。そういう行動をしている作家も多く存在する。

自炊業者の商売自体はグレーだとは思うが、電子書籍化の対案を出さない老害にしか思えない。

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