2012年3月16日金曜日

インビクタス -負けざる者たち-

2009年の映画。クリント・イーストウッドは、本当にいい仕事をする。そして、モーガン・フリーマンは本当に名優だ。

ネルソン・マンデラが南アフリカ共和国の大統領になってからの、闘いの物語。永年に亘るアパルトヘイト(人種隔離政策)によって作られた深く広い溝を、ラグビーW杯を使って埋めていく、その過程が描かれる。

タイトルの「インビクタス -負けざる者たち-」は、19世紀イギリスの詩人ウィリアム・アーネスト・ヘンリーのものだ。映画の中で繰り返し使われる「私が、我が運命の支配者、我が魂の指揮官(I am the master of may fate : I am the captain of my soul)」は、マンデラの獄中生活を支えたと言われる。

黒人選手が一名しかおらず、アパルトヘイトの象徴となっていたラグビーをアパルトヘイト解消の旗印とする事を決め、ナショナルチームを率いるフランソワ・ピナールを鼓舞し続ける。「どのようにリーダーシップを発揮するか」の問いに「手本を見せて指導する」という模範回答を返すピナールに、「優れた作品との出会いが、人を高揚させる。優れた作品が、変化への力をもたらす。」と、映画タイトルであるヘンリーの「invictus」を贈る。選手全員の名前を覚え、一人ひとりにエールを送る。そして、国中が一つになれるよう士気を高める誇れる何かを求めており、その役割をラグビーに求めている、と伝える。

実際に、マンデラに共感したピナールは、アパルトヘイトの意識を引きずる選手たちを引っ張り続け、黒人居住区でのラグビー教室や現地語で綴られる国歌斉唱を実現し、W杯優勝に導く。

アパルトヘイトからの脱却には「赦す心」が必要と諭し続けるマンデラと、徐々に感化されて行く周囲の人々。W杯優勝のインタビューで、薄っぺらい解説者が「会場の6万5千人の声援は力になったか」と問われ、「会場の声援が力になったのではない。国民4300万人の声援が力になったのだ。」と返すピナールに、アパルトヘイト根絶に向けた確実な変化を感じた。

実話だけに、リアリティがあって面白い。必見だと思う。

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