2012年3月30日金曜日

目の付けどころがシャープかどうかは、今後の展開次第

シャープが「鴻海グループとの戦略的グローバル・パートナーシップの構築」を発表した。

シャープ本体と堺工場や亀山工場で液晶ディスプレイの製造を担当するシャープディスプレイプロダクト(SDP)に対して、ともに670億円ほどの出資を受けるそうだ。結果、シャープ本体の10%、SDPの約50%を鴻海グループが保有することになる。シャープ本体の10%は、日本生命を抜いて筆頭株主になる規模だ。

SDPは生産量の50%を鴻海(Foxconn)が引き取る事になるらしく、要はFoxconnの液晶部品製造子会社ということだ。

Foxconnは、世界中のITデバイスの委託製造(EMS)を行っている企業で、100万人の雇用を抱えている。雇用環境や新しいiPhoneなどの製造に関して話題になることが多い。EMSっていうのは、規模の経済を極大化させた事業形態で、薄利多売が商売の基本だ。生産量を増やす事で内部コストを削減し、利益を生み出す仕組みなので、簡単に言うと「部品を安く調達して」「安い人件費で組み立てる」ことが求められている。

人件費は、中国では高騰の一途を辿っており、もはや価格競争力があるとは言えない。そのため、できる限り部品を安く調達する事が、今後の存続には不可欠だろう。現在、精力的に作られているスマホやタブレットなどデバイスに限って言うと、調達コストの大部分をディスプレイとバッテリーが占めていると思われる。実際、iPadなどの分解写真を見ると中身のほとんどはバッテリーだ。

なので、Foxconnにしてみれば、ディスプレイとバッテリーの内製化は、喫緊の課題だったんだろうと思う。

そんな中で、人災(ムダな地デジ化と需要先食い効果しかなかったエコポイント)として起こった日本の液晶ディスプレイ市場の大縮小。シャープが苦しくなるのは目に見えていた。何より1兆円もの巨額投資を行った堺工場が、本格稼働を前に市場シュリンクが起こってしまった事は、シャープのビジネスを極端に難しくしてしまった。逆に、日本市場に入り込めてなかったサムソンやLGは全く傷を負っていない。

自分がFoxconnの立場でも、SDPに白羽の矢を立てるだろう。

液晶ディスプレイの製造は、Foxconn向けが最優先になるんだろうし、内部取引における利益なんて出ないだろうから、今後は、Foxconnの競争力に貢献する事を第一目的とした工場になるんだろう。SDPはそれでもいいのかもしれない。もとより製造部門を切り出したという事は、薄利多売のレッドオーシャンを泳ぐ覚悟をしていたという事だから。

問題はシャープ本体で、液晶ディスプレイ製品に関して巨大市場を作るべく、新しいコンセプトをぶち上げるのか、それとも、液晶ディスプレイは捨てるのか。現実的には後者だろう。とすると、シャープに残されたものは一体何なのだろう?FIT(固定買い取り制度)頼みの太陽光パネルは、エコポイントの二の舞になる事が目に見えている。シャープの事業内容を見ると、液晶以外に今後の柱がないような気がする。

以前も書いたが、新規事業で売り上げを伸ばすには、新規事業そのものではなく本業と呼べる事業の柱への利益誘導がスキームとして必要だと思うが、肝心の事業の柱があるようには見えない。ガラパゴスの失敗でも明らかだが、革新的なビジョンメイク、事業化に向けたコンセプトの絞り込み、製造段階での拘り、営業展開における発想の豊かさなど、事業を作り出す全てのポイントがシャープには足りていない。

グローバル連携と言う意味で鴻海グループと組むのは、目のつけどころとしてはシャープだったかもしれないが、自らの身の置き場が曖昧ではどうしようもない。今まで通りのスピードでは、復活は難しいだろう。なりふり構わぬ展開で、今後の日本メーカーの行動規範を刷新するぐらいの活躍を期待したい。

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